技〜ジャーマンスープレックス編〜
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2007年10月7日日曜日
 <ジャーマンスープレックス編> お話しをお届けするのが遅くなってしまいました。 ジャイアントスイング編に続く第2話。
これまた24歳の頃、某出版社時代のお話しです。 顔色真っ黒な肝臓絶対イカれてる上司の昼飯、 サンドイッチにプリックパックのジュース飲んでると思ったら、 ジュースではなくパックの鬼ごろし。 そんな、アル中が異常に多過ぎであったこの会社、
上司達の溜まり場になってる飲み屋が、 何件かあったんですねぇ〜。 んで、私も時々、連れて行って貰ったりしてたんですが。
「瀧本、一杯行くか!」「はいっ!!」 校了明けの真夜中、 部長にに連れてってもらったそのスナックみたいな店は、 営業部の溜まり場になっているようでした。 で、誰がおんのかなぁーとチェックしたら、 キャ〜ン!! 私の憧れてる営業さんがいるぅ〜ん 下駄とか小汚ぇGパンとか履いとる編集部の男ばっかり見とると、 パリッとシングルスーツを着こなした営業部男性は、 この上なくカッコ良見える。 そして憧れさんはそのなかでも、 妻夫木に似ためちゃタイプの男性だった。
いつもは大酒喰らって醜態さらしとる私ですが、 今回ばかりはそうはいかない!! 憧れさんと親しくなる絶好のチャンス、逃してなるものか!!
お店のママに「飲み物なんにするぅ?」と聞かれ、 酔ってはならぬと「コーラで 」と言ったならば、 「あ〜ら残念、ウチはビールとブランデーだけなのぉ〜」とママ。
マジかい!? あり得ねぇー!! 「お水は?」と聞いたら、 「ロックだ・け・よ」と甘く囁かれる。
さすがや……、 さすがこの会社がご贔屓にしてるだけある。 その会社、大酒豪が多いうえ、めっさ体育会系なのである。 酒の飲めない新人クンとかをここに連れてきて、 洗礼をうけさすんであろうなぁ〜。
「じゃあ、ビールで」 ゆっくり飲めば大丈夫かと思っていたら甘かった。 「おい、瀧本」と、底の深い鍋蓋を上司から渡される。 「へ?」、何のこっちゃ分からず受け取ると、 ビール瓶を持ってきたママが、鍋蓋にビールを注いだ。 「えぇえええ!!」 「一滴残らず一気しろ、ちょっとでも残したら永遠にやり直しや」
この会社に、女をいたわる優しさはない。 そして、ここで一番下っ端の私は、 当然のごとく潰され役になる。 今日だけは、せめて今日だけは、 品行方正な女でいたかったのに……。
「今日もお酒が飲っめるのはっ♪」(ふる〜〜) 満場一致の一気コールを浴びながら、 私の記憶は徐々に途絶えていった……。
目覚めと同時に頭が回り吐き気が込み上げる。 最悪だ、完全な二日酔い。 とにかく何か飲みたい、飲み物飲み物飲み物。
上半身を起こして気付いた。 ここは私の家じゃねぇえええ!! まぁ、でも飲んだらみんなで、 誰かん家になだれ込むのはよくあること。 けれど、ここって誰ん家?、隣りで寝てる男を見る。
「うぁああああ!!」 隣りに寝てるのは、なんと憧れさんだったのだ。 しかも辺りを見回せど誰もいない、2人っきりなのである。 マジ!? なんも覚えてへん。 私、憧れさんとヤッてもた??
憧れさんは私にとってアイドル的存在であり、 エッチとか絶対してはいけない人なのだ。 「今日、挨拶しちゃった、キャイ〜ん 」 そんな存在で居続けなくてはならないのだ。 ウソやろ、ヤッてない、ヤッてないハズやぁああ!!
私が起きた気配を察したようで、 憧れさんも目覚めて上半身を起こした。 えぇええ、憧れさん、パンツ一丁やん!!
「スンマセン○○さん、瀧本と○○さんとヤリました!?」 「アホか! あんな泥酔して暴れ倒してるガルペスみたいな女とやるか!!」 「そうっすか……」 「そやけど自分、大丈夫なん?」 「え? 何がっすか???」 「自分の体見てみぃや」 「うぁああああ!!」
私が着ていたカットソーは、 おびただしい血でドス黒く染まっていた。
「○○さん、なんすかコレ、なんすかコレェ〜!?」 「覚えてへんかぁ、自分なぁ……」 「はい」 「○○部長にジャーマンかけられとったで」 「ジャ、ジャーマンって、ジャーマンスープレックスっすか!?」 「うん、ほんで頭から流血してた」 「流血」くらいから堪えきれず大笑いする憧れさん。 「○○さん、そこ笑うとこでしょうか!?」 「だ、だって、ジャ、ジャーマンて……」 ヒィヒィと笑う憧れさん。
「乙女がジャーマンで流血してるのに、みな何故止めないんでしょうか!?」 「いや、自分も流血しながら立ち上がって、おいこらタコこら!って」 「って?」 「学生プロレスみたいに中腰になって、膝、膝叩いてたで。パーンッって。ひ、膝」 思い出しながらギャハハハハと笑う憧れさん。 「そんでまた、ジャーマンかけっ、かけられて」 涙をちょちょ切れさせながら笑いたくる憧れさん。
その後、ひとしきり笑い終えた憧れさんは、 「俺、飲み屋でジャーマンかけられて、頭から流血するヤツ初めてみた。 そして、これが最初で最後と思う。瀧本、ありがとう」 私に真剣なまなざしを向けて感謝の弁を述べた。
「あぁ〜、おもろ。お前、おもろいなぁっ!!」 「全然おもろいことあるかぁっ!!」
そして、その方がウケると言って上着すら貸してもらえず、 血まみれのカットソーを着たまま憧れさんと喫茶店で昼飯を食い、 「また飲もうなぁ〜!」と手を振られて、帰りの京阪電車に乗り込んだ私。
当然喫茶店でも電車でも、そんな「今、人殺してきましたぁ〜」みたいな恰好、 少しもウケるはずがなく、周囲は遠巻きに私を眺めるばかりでした。
それからというもの、 酔っぱらって軽く後頭部をぶつけただけですぐ流血するようになり、 一部では”リトル・ブッチャー”と呼ばれるようになった私。
みんな
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